労務・人材活性化

労働条件通知書を改訂しないと「扶養内」と認められません

経営VOL.201

今年に入りニュースでも大々的に報じられていることから、皆様は既にご存知だと思いますが、今年の4月から「130万円の壁」に関する被扶養者認定の運用が大きく変わります。つまり、これまで年末が近づくと多くの事業所で行われていた、年収を130万円までに抑えるための「勤務調整」が、今後は通用しない可能性が高いのです。と申しますのは、改正後の認定が、扶養内かどうかは「実際の年収」ではなく、「労働契約時に見込まれる年収」で判断するからであり、そして、その判断根拠として「労働条件通知書」または「雇用契約書」の内容が直接確認される運用になるからなのです。

【それでは、何がどう変わるのでしょうか?】
これまでは、過去や直近の収入を基に今後の「年収見込み」で判断し、一時的な収入増でも、すぐに扶養から外れる訳ではありませんでしたが、それでもシフトを調整し、年収を抑える対応が必要でした。しかし、今年の4月以降は労働契約上の賃金・所定労働時間から算出した「年収見込み」が基準となるため残業・臨時勤務などの所定労働時間外は原則として含まれません。
つまり、労働条件通知書等の提出・確認が前提で、それに年収130万円未満と合理的に判断できる記載がなければ、扶養内とは認められないという点が、今回の改正における最大の変更点です。

また、この改正は「給与収入のみ」の場合に限られるため、「給与収入のみである」ことを報告する申立書も必要です。尚、年金収入や事業収入等、他の収入がある場合には利用できず、従来の方式で判断されます。

未対応のまま想定される現場トラブル】
とは言うものの、院長先生も日々お忙しく、即座に対応することは難しいかも知れませんが、今回は「知らなかった」や「時間がなかった」では済まないトラブルが想定されます。

例えば、労働条件通知書の記載が曖昧、または未整備の場合、保険者から「この内容では130万円未満と判断できません」とされ、本人の意向に反して扶養から外れるケースが想定されます。結果として「職員の手取りが減少」し、それが医院不信となり、離職リスクの増大に繋がりかねません。また、改正後は昇給・勤務時間変更等、労働契約が変わる度に扶養認定の再確認が必要になりますので、これらを踏まえずに労働条件の変更を行うと、結果として、職員の意図に反して扶養から外れてしまうことも十分にあり得ます。
加えて、患者数が一定数を超えた場合に「大入り手当」や「繁忙手当」等を支給されている医院がありますが、これについても、労働条件通知書への記載内容次第で年収に含まれるのか含まれないのかが変わります。目安としては、これらの支給が不確定であり、書面に記載されていなければ年収見込みに含めなくても良いとなっています。

最後に「残業代」についてですが、これは所定外であるため年収見込みに含めなくても良いとされていますが、果たして、どれだけの所定外労働時間が認められるのでしょうか。
厚生労働省は「社会通念上妥当である範囲」とし、具体的な時間や金額まで示していないため、この「社会通念上妥当な範囲」というのは各保険者の判断になるとのことです。

【保険者は「書面」でしか判断しない=整備するしかない!】
4月以降、保険者は「労働条件通知書」「雇用契約書」 「課税証明書・給与明細」「マイナンバー」等による所得情報を突き合わせて確認するため、運用におけるこれまでの曖昧な部分は、ほぼ「無くなった」と言えます。つまり、改正制度に従わない限り、扶養内と認められなくなったということです。
従いまして、下記のポイントで労働条件通知書を整備するしか選択肢はありませんので、今号をご覧になって頂いた契機に、是非、今からでも取り組んで頂ければと存じます。

□ 労働条件通知書は現行制度対応か
□ 所定労働時間・賃金が明確か
□ 年収130万円未満と見込める設計か
□ 条件変更時のルールが整理されているか

【最後に:度重なる労務法制の変更に対応するために…
2019年に「働き方改革」が始まって以降、本当に色々な改正があり(有給5日取得、同一労働同一賃金、労働条件通知書改訂、育児介護休業制度改正、これまでのハラスメント対応だけでなく今年の10月からはカスハラ対応も…)その度に事業主は多大な負担を強いられている状況の中、今回の改正も重なり、院長お一人では「お手上げ状態」かと思います。以前、AMCPレポート内でもお伝えしましたが、「もう一人では出来ないので労務整備を手伝って欲しい」というご依頼が増え、順次ご対応させて頂いておりますので、ご希望される先生方は、是非、ご連絡を頂ければと存じます。

PDFダウンロード