労務・人材活性化

「親子承継」を成功させる絶対法則!

経営VOL.158

 前々号・前号と2回に渡って「承継の準備とは具体的に何をすることなのか?」について記載させて頂いたところ、「これらを実行に移すためにサポートして欲しい!」というお声を多数頂き、現在、順にご対応させて頂いておりますが、皆さん、やるべきことが明確になったら行動が早いと感服しております。やはり、この行動力が現在の「隆盛の源」になっているものと、日々、改めて実感している次第です。 さて、そのサポートを依頼されてきた中に、『承継するかどうか迷っている息子がいる』という先生がおられ、よくよくお話をお聞きすると、ご子息は、『自院を承継するか、自分で新たに開業した方が良いのかどうか迷っている』とのことで、迷っているポイントは、以下の4つということでした(↓)。

  1. 昔は患者で溢れかえっていたが、今はそこまで多くなく、むしろ少しずつ減っているので、自分が承継してもこのままジリ貧になるのではないかという「マーケットの不安」
  2. そうなると、永続的に売上が見込めない=お金に不自由するかも知れないという「財務状況の不安」
  3. 現スタッフは昔からいる人が多く、現院長との信頼関係が強いため自分が承継して上手くいくかどうか、また、やはりスタッフは最初から自分で面接した上で揃えたいが、承継ではそれが出来ないし、やろうとすれば今の人たちに辞めてもらわなければならない。それはスムーズに出来るのかどうか分からないという「人事・組織運営の不安」
  4. 承継後、口では「任せた」というものの、恐らく経営に口を出すであろう両親(父親は院長、母親は事務)と一緒にするのは難しい(自分の思い通りの経営ができない)のではないかという「身内介入の不安」

 「親父のやり方は古い!自分の代で今のやり方でクリニックを大きくするぞ!」と、前院長を全否定し、色々な勉強会やサロンに参加して成功している(といわれる)先生たちからの情報を取り入れ、どんどん新しいことに取り組み新しい医療機器を導入し…、そして、誰の忠告にも耳を貸さず、結果、スタッフが付いて行けずに退職が相次ぎ、クリニックが立ち行かなくなってしまったという話はよくあるのですが、このご子息は、冷静に自分自身の将来をお考えのようです。1.~3.については、もうお分かりの通り、前号までにご紹介した、ご子息でなくても承継側が気にする共通項ですので、こちらは「事前準備」を今からでも進めていけば良いのですが、4.については、実は、親子承継の最大のポイントなのです。    

【親子承継の事例紹介(成功例・失敗例)】 
AMCパートナーズでは、この20年間、数多くの「親子承継」に関わらせて頂き、成功例も失敗例も見て参りました。当然、各親子関係によって事情は千差万別であり、一概には言えない部分もありますが、概ね、成功する場合と失敗する場合について、凡そ分かっていることをご紹介します。(今回は、親子とも同一診療科目とさせて頂きます)

《失敗する例:1》

〇 承継後、親が子のやることに何でも口を出す

〇 決裁がダブルスタンダード(決裁者が2人=現場混乱)

〇 勤務医である親が現院長の指示に従わない(特別)

〇 採用の最終面接に母が同席し、最終決定を行う 等

  上記例は『親が子を承継者として認めていない』、つまり『いつまでも“子供”として接する』ことで失敗する例です。「あいつはまだまだ分かっていない」「世間を知らない」「世の中を甘く見ている」、だから「自分が正しいことを教えてやらないと!」という、これまで苦労してきた自分と同じ苦労をかけさせまいとする悪気のない親心がそうさせているケースが多いのですが、これが逆に「仇」となってしまっているのです。 

《失敗する例:2》

〇 承継後、子が親を全否定し、一切の関与を認めない

〇 何かあれば親の責任にする

〇 子が親に雑用等、無理な要求を行う  等

これらは、例1の逆で、こうなるとクリニックがどのような顛末になるのかは先述した通りで、非常に厄介なケースです。

【それでは、どうすれば良いのか → 絶対法則です!】
「子供に任せた以上、親は口を出さない」ことが親子承継の成功の秘訣であるかのように言われますが、ある意味「正解」です。しかし、だからと言って親が何もかも放り投げ、「後は知らない」という姿勢でも子は必要以上に苦労します。 重要なのは、承継時点で「親子関係」ではなく、ドクター同士という対等の関係になるということで、お互いを一人のドクターであることを認め、親子と言えども第三者が承継する場合と同じく「信頼関係」がないと失敗するということです。 とは言うものの、親子であるが故に第三者より上手くいかないケースもありますので、お困りの際は是非ご相談下さい。

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