労務・人材活性化

スタッフの定着に「人材確保等支援助成金」を!

経営VOL.194

昨今、ただでさえ就労人口が減少している中、その取り合いのために募集賃金も右肩上がり、そして、苦労して採用しても早々に退職してしまう…、という皆様の窮状の一助として頂くために、これまでAMCPレポートでは定着のための取り組みについて幾度か取り上げてまいりましたが…、未だにご苦労されている先生方は、まだまだ多くおられるようです。
そこで今号では、改めて定着してもらえる医院となるようにじっくりと取り組む方法と、それを後押ししてくれる助成金(人材確保等支援助成金)についてご紹介させて頂きます。

【原点に返る ①:そもそもスタッフが定着する医院とは?】
以前、スタッフが定着するには「労務コンプライアンス」が重要であること、また、ロサダライン(3:1の法則)ダブルバインド(二重拘束)のお話もご紹介しました(思い出して頂くためには、経営VOL.189、190、191をご参照下さい)が、離職理由として、現在、下記の理由も根強く残っています。

□    昇給するかどうか分からない(昇給制度がない)

□    頑張っても頑張らなくても同じ(評価制度がない)

□    賞与の出方が分からない(支給基準がない) 

 つまり、新たに採用したスタッフはもちろん、これまで頑張ってくれている既存のスタッフさんにも、日々、頑張った先の景色を見せてあげなければ、いずれ去ってしまうということです。

【原点に返る ②:1人1人を大切に扱っているか?】
離職の主な要因は「人間関係」であることは以前もご紹介しましたが、各自の人間関係に踏み込むことは難しいものの(巻き込まれている先生も散見されますが…)せめて、退職を決意するまでに相談できる環境はあるに越したことはありません。また、賃金以外の待遇として「有給休暇」や「勤務時間」がフォーカスされることが多いですが、意外に、本人だけでなく家族も気になる「健康」について、細かく気を配ってくれる職場は人気が高いようです。
つまり「給与を払ってるのだから働くのは当たり前、待遇も法律以上のことは必要なし」という「正論」が「正解」ではない世の中になっているのです。
 以上のことから、定着のためには、安心して頑張れる制度を整え個々の様子に気を配り心身ともに医院としてケアをする、このような体制を作り上げることが必要不可欠ということなのですが、これを国が体系立てて取り組みやすいように準備してくれたのが「人材確保等支援助成金」なのです

【「人材確保等支援助成金」とは?】
助成金の概要には『事業主が求職者や従業員にとって「魅力ある職場」を創出するため、新たに雇用管理制度や業務負担軽減機器等(スタッフの直接的な作用負担を軽減する機器・設備等)を導入し、その適切な運用を経てスタッフの離職率の低下が図られた場合に、取り組み内容に応じた額を支給するもの』と記載されています。
具体的には、

≪A:雇用管理制度の導入≫

□    賃金規定制度(賃金表の整備)

□    諸手当等制度(資格手当などの導入)

□    人事評価制度(人事評価制度の導入)

□    職場活性化制度(メンター制度等の導入)

□    健康づくり制度(人間ドックの実施)

 ≪B:業務負担軽減機器等の導入≫労働者の業務負担の軽減が図られる機器・設備等の導入

 のいずれかを導入することにより、離職率が下がった場合において、その取り組みに応じて、Aでは上限80万Bでは対象経費の1/2、上限150万(賃金を5%以上アップさせた場合:加算要件の場合では、Aでは100万、Bでは62.5/100、上限187.5万)が支給されるというものです。(AB合わせて最大230万、加算要件の場合287.5万)
つまり、スタッフが安心して頑張れる制度(昇給制度や評価制度等)を導入したり、それだけでなく個々をケアするためにメンター制度や1on1ミーティングを実施したり、定期健康診断だけでなく人間ドックを導入したり、いわゆる、国が提唱する「魅力ある職場」づくりに“じっくり”取り組み、離職率が下がれば、その補助を国がしてくれるということです。
尚、業務負担軽減機器については詳細がないため、助成金の受給に関わらず、医院で購入予定のものがあれば、それは該当するのかどうか調査するため事前に相談して欲しいとのことでしたので、何か購入する予定があれば、それを助成金に取り組むきっかけにしても良いかも知れません。

【長期間、かつ丁寧な設計が必要なので、ご相談を!】
これは、計画書の認定後、3ヶ月から1年の実施期間を経て、その後、1年間の離職率算定期間を経た上で支給される先の長い助成金ですので、この機会に、時間を掛けてじっくり取り組みたい先生方は、是非、ご相談下さい。

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