労務・人材活性化

10月からの“カスハラ対策”義務化に向けての準備

経営VOL.202

近年、接客業などを中心にカスタマーハラスメント(カスハラ)が問題になっており、まず、東京都では2024年に「東京都カスタマーハラスメント防止条例」(東京都カスハラ防止条例)が制定されました。そして、国レベルでの横断的な法規制がなかったことから、2025年に労働施策総合推進法の改正が成立し、全ての事業所においてカスハラ防止の義務化が新たに盛り込まれ、今年の10月から施行されます
この改正は“全て”の事業所が対象であり、当然、クリニックも含まれますので、10月までに対策を講じなければなりません。よって、今号ではカスハラ対策の義務化について、具体的に何をしなければならないのかをお伝えさせて頂きます。

【そもそも、『カスタマーハラスメント』とは?(定義の確認)】
まず、カスタマーハラスメントとは、具体的にどのような行為なのかですが、以下の3つの要素を全て満たす行為です。

① 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う

② 社会通念上、許容される範囲を超えた言動により

③ 労働者の就業環境を害すること。

具体的には、下記のような“度を越した”クレームや言動によって労働者の就業環境が害されることなのです(↓)。

要望の内容に妥当性がないもの

  • 要求に理由がない・サービス等と全く関係ない要求
  • 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
  • 対応が著しく困難、対応が不可能な要求
  • 不当(サービスや商品内容と無関係)な損害賠償要求

要望を実現するための手段・態様が不相当なもの

  • 身体的な攻撃:暴行、傷害等
  • 精神的な攻撃:脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言等
  • 威圧的な言動:大声で労働者や周囲を威圧すること・反社会的な言動を行うこと、土下座を強要すること等
  • 継続的、執拗な言動:同じ質問をしつこく繰り返す・当初の話をすり替える・揚げ足を取る・執拗に責め立てる等
  • 拘束的な言動:不退去、居座り、監禁等

これまで医療現場では、医師法の「応招義務(正当な理由なく診療を拒んではならない)」を意識する余り、スタッフが一方的な暴力・暴言に耐えざるを得ない状況がありました。
しかし、この状態を放置した結果、これが原因でメンタルを病み、離職するスタッフが全国で相次ぎ、安全な医療の提供やクリニックの経営基盤を脅かす事態となったため、国は各事業所に任せていたカスハラ対策を「法的な義務」へと格上げし、国をあげて働く人の尊厳を守ることにしたのです。
ちなみに応招義務についてですが、厚生労働省が令和元年12月25日に発出した通知にて、カスハラに関連し、下記のような、信頼関係が破綻している場合、かつ緊急性がない場合は診療を拒否しても「正当な事由」に該当すると明記されていますので、是非、押さえておきましょう。

患者の迷惑行為(ハラスメント)
診療時間外や予約外の来院、特定の医師による診療の強要、暴言・暴力、ハラスメント等により信頼関係が喪失している場合支払い能力・意志の問題
特段の理由なく治療費・入院費を支払わないなど、支払能力があるにも関わらず悪意を持って支払わない場合


【それでは、事業所が講ずべき対策(3つの義務)とは?】
今回、事業主に課されている3つの義務をご紹介します。

① 方針の明確化と周知

「カスハラは許さない」という姿勢を院内外に公表します。具体的には、ポスターの掲示等にて明示・周知することです。但し、掲示するだけでなく、『スタッフを守るため、本当にカスハラを許さない』という院長の姿勢も重要です。

② 相談体制の整備と周知

スタッフが被害に遭った際、すぐに報告・相談できる窓口や手順を作ります。これがスタッフの安心に繋がります。

③ 事後の適切な対応

被害を受けたスタッフのメンタルケアや、勤務配慮、必要に応じ家族への説明の他、加害者への毅然とした対処を行います。これがスタッフの医院への信頼に繋がります。

義務としては以上ですが、実際、具体的に準備するにはどうすれば良いか(どのようなポスターを掲示し、どのような相談体制を作るのか等を考えなければいけませんし、実際にカスハラが起こった場合にどうするか(マニュアルの準備、警察に連絡するタイミング等)総合的に考えなければいけませんので早めの準備が必要です。是非、今のうちにご相談下さい。

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