労務・人材活性化

話の長い患者さんを上手に切り上げるには…?

経営VOL.166

令和5年が始まり、早くも1ヶ月が経過しました。
前回、年齢と共に時間の経過を早く感じる『ジャネの法則』をご紹介し、仕事始めの大切さをお伝えしましたが、その後いかがでしょうか。もし、例年通りで何も変わっていないのであれば、前号を再読し、是非、実のある年にして頂きたいと存じます。

さて、最近、『再び、コロナの感染者が増えている中、感染を恐れず来院してくれるのはありがたいが、ここ数年、人付き合いが減ったせいか、話の長い患者さんが増えて困っている』というご相談が増えました。
つまり、『当然、当院としても来てもらっている以上、丁寧に接することを心掛けているが、余り長居されると他の患者さんの待ち時間が長くなるし、診療が時間通りに終わらず残業代が増えるし…、だからと言って、話の途中で切り上げると“話を聞いてくれない”とクレームになったり書き込みされたりするリスクもあるので…、何とか上手く切り上げる方法はないのか?』ということなのです。

コロナ禍に限らず、話の長い患者さんは一定数いますし朝礼やカンファレンスで、話の長い患者さんは誰なのか共有し、その前提で対応しているクリニックも少なからずあります。
しかし、その数を増えるに任せていると診療効率が下がり、スタッフも疲弊してしまいますし、逆に、無下に切ってしまうと心証を害してしまわれるかも知れません。よって、難しいことではありますが、やはり健全な診療を提供するために、このご時勢、長い話を切り上げる技術は必須スキルと言えますので、今号にて、実際に使えるスキルをご紹介したいと思います。

【インターネットで『話の切り上げ方』を検索すると…】
最近では、先生方も何かあればインターネットで「検索」されることが多いかと存じますが、今回のご相談である「話の切り上げ方」で検索したところ、困っている人が多いせいか、かなり多くの手法が出ていました(以下、ご参考です)。

□ 時間を気遣う → お時間大丈夫ですか?
□ 強引にまとめる → つまり、こういうことですね?
□ 嘘の用事を作る → この後、〇〇がありますので。
□ 明るく終わる → 今日はありがとうございました!
□ 忙しさのアピール → 聞きながら別のことを始める。
□ 態度に出す → 無反応・笑わない・相槌なし。等

どの手法も一理ある方法なのですが、それでは、それをそのまま実行すれば良いのかと言えばそうではありません。

例えば、一番目の『お時間大丈夫ですか?』を実行すると、凡そ大半の患者さんは『あ、すみません、先生も忙しいのに…』と恐縮して自ら切り上げてくれると思われますが、一定数いるであろう『大丈夫です!』と言葉の行間を読まず額面通り捉える患者さんには、この手法は有効ではないということになりますし、『つまり、こういうことですね?』とまとめる手法も本人の納得するまとまり方でないと不満が残りますし、用事があることを伝えれば患者を大事にしない先生と思われますし、いきなり「ありがとうございました!」も違和感しか残りませんし、最後の2つなど「クレーム」と「離反」しか生みません。

要は、今回だけに限らないのですが、何か問題を解決したい場合、すぐに解決方法を探し、それを実行するだけではこのような誤った対応になってしまうので、まず、「現象」を正確に把握する、つまり、今回であれば、話の長い患者さんという「現象」には、どのような特徴があるのかを正確に把握してから手法を講じなければいけないということです。

【現象を正しく理解すれば、正しい対応ができます!】
それでは、今回の「現象」である話の長い患者さんにはどのような特徴があるかと申しますと、一般的には①承認欲求が強いにも関わらず②自分に自信がなく、③全て話さなければ相手に伝わらないと思い込んでいると言われています。
これを理解すれば、話の長い患者さんには、①承認欲求を満たし、②自分に自信を持たせ、③「全て伝わっていますよというメッセージを出すという対応、つまり『傾聴(なるほど)→共感(そうなんですね)→承認(すごいですね・素晴らしいですね・よく分かりました)』という対応が望ましいということが分かります。
つまり、この3つの特徴が満たされ満足すれば自分から切り上げるようになり、逆に、この3つが満たされない限り、どの手法を使っても逆効果になるということです。
また、この対応に加えて「喜んで聞いていますよ」という表情や姿勢を見せ、話が終わる頃には「もっとお話を聞きたいが、やむを得ずこの場を終えなくてはならず残念=また聞かせて欲しい=次に来られるのを楽しみにしている」という気持ちをお伝えすれば、満足度は更に上がり、再来院してくれるだけではなく、紹介に繋がる可能性も高くなると思われます。

今回は、「話の長い患者さん」を取り上げましたが、この他にも様々な問題患者さんの対応が必要になると思われますので、今号を参考にして頂き、まずは現象を正しく把握し、その上で対応するという流れを実践してみて下さい。

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