労務・人材活性化

扱いが難しい「Z世代」を戦力にする方法とは?

経営VOL.168

先日、K先生から、『今年も4月から新卒のスタッフを迎えるのですが、以前から、新卒は言われたことしかしないと感じていましたが、ここ数年は、その指示したことすらできない、ルールも守れないスタッフが増えたと感じます。当然、せっかく入職してくれていますし定着して欲しいので、我慢強く、昔に比べてもはるかに丁寧に指導をしているのですが、結局、数年と続かず辞めてしまうというパターンが続き、昨年採用した新卒も残り1人になりました。これから、どうしたら良いのでしょうか。正直、お手上げです』というご相談がありました。

 確かに、K先生からすると、以前に比べて丁寧に指導し、自分自身は頑張っているのに若いスタッフがそれに応えてくれないので、これ以上、どうすれば良いのか分からない…、というお気持ちになるでしょうし、K先生に限らず、何人かの先生から同じようなご相談を頂いたこともありますので、この気持ちに共感される先生方も多いのではないでしょうか。 

現在、新しく入職する若い世代は『Z世代』と呼ばれ、概ね1990年半ばから2010年代生まれを指し(年齢でいうと概ね25~26歳以下)、これまでの世代とは価値観が違うと言われていますが、よく考えると、今までも「ゆとり世代」や「さとり世代」、「ミレニアル世代」等、価値観が違うとされる世代が次から次へと登場していますので、時代の変化により新たな「世代」が登場するという流れに変わりはありません
つまり、これからも、新たに価値観が違う色々な世代が出現し、その世代と一緒に仕事をし続けなければいけないということに変わりはないのです。 

【指示を理解しないのは「受け手」だけが原因なのか?】
K先生は『丁寧に指導しているのに…』と仰るのですが、この言葉の行間に、丁寧に指導=誰にでも分かるように指導=これを理解しないのはスタッフの「能力不足」か「やる気の無さ」、というニュアンスが垣間見ることができないでしょうか。
つまり、K先生に非はなくスタッフ(受け手)にのみ問題があるという認識であるため、「お手上げ」=「これ以上どうしようもない」というコメントに繋がっているものと思われます。

もちろん、K先生は全力を尽くしておられると思いますので、結果として、このような感情になってしまうのは十分過ぎるほど理解できますし、同調の余地もあるのですが、原因を受け手側だけの問題として片付けてしまうと、上述の通り、今後も価値観の違う世代と一緒に働き続けなければいけないという状況に対応できなくなってしまいます

【まずは、「受け手」の特徴を知っておきましょう!】
この4月から入職する新卒も含め、いわゆる「Z世代」とはどのような特徴があるのか、多少なりとも知っておいた方が良いかと思いますので少しご紹介しますと、まず、一番は「デジタルネイティブ」、つまり、生まれながらのデジタル世代ですので、「自分と同質性の高い他人(同世代・同趣味等)とのコミュニケーションが得意」ということが挙げられます。逆に言うと、「異質な他人(上の世代や考えが違う人等)とのコミュニケーションに不慣れだということです。もちろん、Z世代全員がそうではないと思いますが、概ねの傾向としてご認識下さい。

次に、詰込み教育から生徒の個性を重視する教育にシフトされた世代であるため、先生からの押し付けではなく、話し合いによって自分の意見や考え方を発信することに慣れているため、自分の考えや意見を発信する機会がないと、どのような話し方をされても一方的と感じてしまうということです。
ちなみに、リクルートマネジメントソリューションズによる「新入社員意識調査2022」によると、Z世代が上司に期待することのトップが「意見や考え方に耳を傾けてくれること」でしたので、この特徴が見事に反映された結果となっています。

つまり、Z世代とは極論すれば『目上の人間から一方的に話されるのが苦手な世代であり、厳しく言われても丁寧に言われても、そこは関係なく、コミュニケーションの相互関係性を極めて重要視する世代』と定義して良いかと思われます。

【基本的にZ世代のスキルは高いので活用しないと損です】
この話を聞いてK先生は、残った1人に皆の退職理由を聞いたところ、案の定、丁寧というより、一方的大量のマニュアルを細かくレクチャーされ、また、どう見ても無駄なものや意味が分からないものもあったが聞ける雰囲気ではなくとにかく覚えろという姿勢が嫌で辞めていったということでした。
そして、この機にK先生は業務面談を行い、率直な意見を聞いたところ、驚くほどマニュアルについて無駄や無意味な箇所を指摘されました。しかし、逆に、意味や理由を理解していないところも分かりましたので、指摘された箇所について先生からその意味や理由を丁寧に説明した結果、そのスタッフは納得したのか、デジタルツールを駆使して色々なことを効率化し、早々に新しいマニュアルを作ってくれました。

今回の事例から、Z世代活用のポイントは、相手の言い分を聞くだけでなく、こちらの言い分も聞いてもらう、つまり、お互いの話を傾聴する『互聴』により、異質から同質に関係性を変化させることだと分かります。是非、参考にして下さい。

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