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新規開業医の悲しい物語

第9話はじめての「資金計画」:前編

以前、見せてもらった「資金計画」には、開業必要資金が約5,000万円となっていた。

これも、今から思えば情けない話ではあるが、何故、「高くないか?」と一瞬、胸が痛んだ瞬間に、「何に対して、幾らかかるのか?」を正確にその場で把握しようとしなかったのか(合計欄しか見ていなかった)、また、本当にこの金額で収まるのか確認をするべきだった…。
最初から約5,000万円と聞かされていると、その金額が頭を支配する。つまり、TOTALが5,000万円前後で納まれば「予定通り」と思ってしまうし、佐川氏からすれば、5,000万円まで使っていいですよという承諾を得たこととなる。

そこに、節約の精神はまず生まれない。限度額一杯まで使おうという消費意識のみが支配するだろう…。

佐川氏の計画は下記のようなものだった。

テナント保証金:6,048,000円(家賃の12ヶ月分 504,000×12ヶ月)
不動産仲介料:504,000円(家賃の1ヵ月分)
開業まで家賃:1,512,000円(工事着工から開業までの3ヶ月分)
医師会入会金:5,000,000円
内装費用:15,000,000円(消費税別:750,000円)
設計管理料:1,500,000円(工事費用の10%)
什器備品:2,100,000円(税込)
医療器械:3,150,000円(税込、一部リース予定)
運転資金:12,000,000円(月200万の運転資金×6ヶ月分)
印刷物等:500,000円(新聞折込チラシ・求人広告・その他諸々の諸経費
佐川氏支払:2,000,000円(開業コンサルティング料)
合計金額:50,064,000円(概算値)

完全にマインドコントロール状態であったから仕方ないのかも知れないが、開業コンサルタントの佐川氏は全面的に自分の立場に立って動いてくれていると信じ切っていた。だから、自分があれこれ心配するのは無駄のように思え、かつ、あまり余計な事を言って、佐川氏の機嫌を損ねるのも怖かったという事情もある。

更に、コンサルティング料も先輩より100万円安く、家賃も下げてもらっているという事実もある。

「先生、自己資金は1,000万円ぐらい準備出来ますよね?」

そういえば、佐川氏と会った最初の面談時にも聞かれていたが、バタバタして何も考えてなかった。

「はい…、まあ…。1,000万ぐらいなら準備出来ると思います。」

自分の貯金は、確か、かき集めると500万~600万はあったと思うし、幾ら持っているか知らないが家内も協力してくれるだろう。また、親父も開業する際には援助してくれると言ってくれていたので、余裕があると思う。

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