
ホーム > クリニック経営情報 > 新規開業医の悲しい物語 > 第8話

自分の新しい「城」となるテナントが決まり、患者が集まるという太鼓判ももらっていたから何の不安も無かった。
しかし、たまたま、医療従事者向けの雑誌に、最近のクリニックにおける開業事情が掲載されており、「競合が激化し、患者数確保が困難。」と大きく書かれた記事を目にした。
「あれだけ人通りが多く、駅からあれだけ目に付けば患者は多いとは思うが…、そう言えば、この地域の人は、今現在病気になった時はどこに通っているんだろう?ウチが開業したからと言って、その人たちが全て流れて来るワケでもないだろうし、長年通っている“かかりつけ医”もいるだろう。本当に大盛況になるのだろうか?」
気になって、佐川氏に連絡してみた。
「先生、私どもで“診療圏調査”を行っていますので大丈夫です。もし、気になるようでしたら、その結果を、次の打ち合わせの際にお見せしましょう!」
何だ、そんなものがあるのであれば、先に見せるのが普通じゃないのか?それとも、それは開業物件を進めるコンサルタントの内部資料なのか?まあ、いずれにしても不安を解消する材料になるのは間違いないだろう。
一体どんな資料が出てくるのか…。
後日、佐川氏が持参した「診療圏調査結果」というレジュメは素晴らしかった。
物件を中心に、500m、1kmと円を書き、その中の人口を役所等で調べ、競合医院のプロットもしてあって、よく分らないが色々調べてあるみたいだった。それらの結果として、1日の来院推定患者数 80名となっていた。
この80名が多いのかどうかぐらいは分る。非常に多いと思う。根拠もしっかりしている(と思う)。
これは信じていい数字なのだろうか…?ただ、自分で検証する術がないので信じるしかないのだが…。
「先生、1日80人なので、午前40名、午後40名という計算です。患者さん1人当たりの単価が仮に5,000円とした場合、そうですね、休みを抜いて毎月平均22日の診療日数として、年間売上は約1億ぐらいになりますね!」
年間1億の売上げ?よく分らないが、今の年収から考えると、すごい話だ。
仮に、経費が半分かかったとしても残り5,000万円。
「年収5,000万円か…。」
頭の中は、それだけが支配するようになった。
今から考えると、恥ずかしい限りだが、気持ちの中で一番楽しかった時期かも知れない。