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新規開業医の悲しい物語

第35話世の中というものを知る:前編

「どうだ?順調に進んでるか?」

休診である木曜日の午後、吉田先輩に時間を取ってもらった。

「ええ、おかげさまで、何から何まで佐川氏にやってもらって助かっています。いい人を紹介していただいて、ありがとうございます。」

これは事実なので素直にお礼を言っておいた。

しかし…、やはり何点か気になることがあるので思い切って聞いてみた。

「こんな事を聞いていいのかどうか分かりませんが、先輩は、佐川氏に幾ら払われました?」

自分はディスカウントしてもらっているはずなので、先輩は300万円支払っているはずだ。

「え~っと…、結構安くしてもらって、確か200万円だったかな?」

…同じだ!自分だけが安くしてもらった訳ではないのか…。

結局、いきなり200万円と言われるより、“本来、○○円のところを、特別に譲歩して○○円”という言い方の方が、払う側の財布の紐がすんなり開くということだ。

スーパーやデパートでも、元々の値段に二重線を引いて、その下に「値下げ価格」を掲示していることがよくあるが、聞いた話によると、元々、二重線を引っ張っているその値段は存在しないらしい。

つまり、高い金額を見せた上で、その下の金額を提示するという、一般的に行われている手法だ。

それを「自分だけ安くなった!」と当時は喜んでいたが、違うのか。世間知らずも甚だしい…。

“開業”という大きな不安を、これぐらいの金額で消せるのであれば…と、お金を支払う事で逃げ、その金額が通常よりも安いということで自己弁護していた自分が情けない。

次の質問をするのが怖くなってきた…。

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