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新規開業医の悲しい物語

第31話医院名・標榜科目はどうするか

「開業届を作成しますので、医院名と標榜科目、診療時間、スタッフ名を教えて下さい…。」
「あと、敷地平面図ありますか?」
「医師免許証のコピーありますか?先生の住所も教えてもらえませんか?」
「履歴書作ってもらえませんか?」
「あと…、」

吉村氏から連絡が入った。

どれだけ聞くことがあるんだ?

何故、この間、領収証を渡した時に聞かないんだ?

『医療に強い税理士事務所』と謳うのであれば、せめて、『開業時のヒアリング事項一覧』ぐらいはないのか?
佐川氏にも同じ事を感じたが、何故、最初から分かっていることについては事前に案内してくれないんだろう…。

いずれにせよ、正式な名前をどうするか佐川氏と決めていなかった。

自分の中では、「大川医院」というぐらいしか考えていなかったが、果たして佐川氏は…、

「先生、それでは何をやってる医院か分からないでしょ?」

「はあ…。」

「先生の医院は、“おおかわ内科胃腸科クリニック”でいきましょう!もう、それで方々に手配かけてますよ。」

「まず、“ひらがな”がポイントです!これは、最近の主流で“親近感”をアピールします!」
「そして、胃腸科を入れておかないと…!先生は“消化器専門”なんですから。」

そうですか。記念すべき“命名”は終わってましたか。何故に一言も相談がないかなあ…。

ただ、佐川氏のスタンドプレーだったが、この名前は気に入った。

しかし…、だ!

極端な例だが、自分の子供の名前を勝手に他人に命名されて、“気に入った!”という親がどこにいる?

何かの本で読んだが、“愛”の反対語は“無関心”らしい。

まさに、このクリニックに対する自分の気持ちが…無関心に近い証拠だ!

自分の「城」なのに、落ち着かないのも当然だ…。

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