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新規開業医の悲しい物語

第20話テナントはウチだけ?

内装工事がスタートしたというのに、他のテナントは工事を始める気配が無い。

どうやら、この医療ビルで9月からオープンするのはウチだけで、残りの3件は空き室のままらしい。
とは言うものの、他は“交渉中”と聞いていたので、そのうち入るものと思っていた。

ところが…、

なんと、1階は「調剤薬局」で、この医療ビルは、この調剤薬局さんが企画し、現オーナーに持ってきた話だったとのこと。「1件は入居が決まってまして…」と言われていたが、最初から決まっているテナントだったのか。

ということは、募集で入居したのは自分だけか。早い者勝ちというのはウソだったのか…?

早速、佐川氏に聞いてみる。

「いやね、3件ともほぼ決まっていたんですがね、皆さん色々事情があって辞退されまして…。」

普通、3件とも足並みを揃えて「辞退」するか?どうも話が胡散臭い。

「しかし、先生、これだけの物件ですから、次々と問い合わせが来ています。だから、もうすぐ埋まるでしょう。」

問い合わせがあるのかどうか知らないが、内装工事が始まってから何回か現場に足を運んでいるものの、見学者っぽい人を見たことがない。

今さら、何を言っても始まらないので、「そうですか…」と話を切ったが…、

平成19年の今では、単なる「医療雑居ビル(色々な診療科目の寄集め)」を作るだけではいけないということがようやく認知され、モール形式やビレッジ形式で連携を強化し…、という取り組みがなされているが、平成16年当時はラッシュと言ってよいほど、医療ビルやら介護施設が入居する、単なる“雑居ビル”が建設されていた。

入居者が医療機関であれば、高い家賃が安定して入るというイメージが当時はまだまだ強く、診療報酬の改訂や患者の自己負担増等、医療経営環境の悪化が目に見えているにも関わらず、医療業界をよく知らないコンサルタントと称する人たちが「儲かりますから建てましょう!」と音頭をとったことも大きな要因ではある。

その結果、医療ビルが乱立し、何のコンセプトも持たずに建てただけの所はテナントが虫食い状態であったり、閉鎖されていたり…、目も当てられない状態になっているビルも多い。

しかし、そんな事情を知ったのはつい最近のことで、当時は「流行の医療ビル」だからと安心し、夢にも“そんな物件”とは思いもよらなかった。

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