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新規開業医の悲しい物語

第18話建物賃貸借契約

何とか融資がOKとなったのもつかの間、すぐに必要なお金として、ビルへ支払う「保証金」及び、工事会社に払う「手付金」が発生するとのこと。

先日の独自(ただ歩いただけの)診療圏調査の不安を抱えたまま、佐川氏に連れられて契約の場に来た。

「それでは、早速契約しましょうか。」

と佐川氏が音頭を取るやいなや、オーナーが口火を切って契約書を読み始めた。

「え~、すでにご存知と思いますが、家賃は佐川さんにお願いされて504,000円、管理費は126,000円…。」

「はぁ?管理費?そんなもの聞いてませんよ!」

すかさず、佐川氏が口を挟む。

「先生、私、言ってませんでしたっけ?すみませんねえ。しかし、家賃以外に管理費がかかるのは常識ですよ。」

常識かどうか知らないが、払うこっちは月12万以上の負担が増える。余りにも不親切だろう。 親父に指摘された時に、すぐに確認すれば良かった…。しかし、あとの祭りだ。

とは言うものの、感情は抑えられない!

「佐川さん、私は家賃を504,000円で計算して資金繰りを考えていたんですよ!どうしてくれるんですか!」

思わず私は声を荒げてしまった。

「どうするも何も、金額的にどうしようもないですね。他の店子さんも払ってくれるものですし…。何なら、この契約を止めますか?銀行の融資から何からストップして全て一からやり直しますか?」

そう来たか。佐川氏がいなければ何も出来ないと完全に足元を見ている。

しかし、残念ながら、開業を一から自分1人でやり直す根性は私にはない…。

「分かりました。大きな声を出して失礼しました。これでお願いします…。」

「さすが先生、人格者ですね!これで先生の医院は繁盛間違いなしですわ!」

この時ほど、「人格者」という言葉が体に突き刺さるように響いたことはなかった。
人に手玉に取られるというのはこういうことか…。
人生でこれほど悔しい思いをしたことはない。

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