
ホーム > クリニック経営情報 > 新規開業医の悲しい物語 > 第15話

親父との話は続く。親子の会話というより“尋問”に等しい。針のムシロとはよく言ったものだ。
「お前が入るビルの家賃は?広さは?」
「50万ちょっと…。42坪らしい。」
「そうすると、坪12,000円ぐらいか。近隣相場からすれば少し高いな。管理費込みか?」
ん?管理費?未確認だった。急に不安になってきた。
「確認してないけど、多分“込み”と思う…。」
「家賃の交渉はしたのか?」
「お願いしているコンサルタントが、本来15,000円のところを12,000円にしてくれたらしい…。」
「本当か~!?元々その値段じゃないのか?他所のテナントに仲良くなってから聞いてみろ!」
この用心深さ、さすが経営者…。見習わないといけないと思うが、昔から親父のこういう性格が嫌いだったこともあり、あえて真逆の行動を取ってきたように思う。
疑い深く、「性悪説」に立ち、何でも「交渉」に持っていく親父に対して、自分は常に「性善説」に立ち、自分に寄って来る人は全て受容する。聞こえはいいが、結局、「交渉」という行動そのものが煩わしかっただけなのだ。生まれてこのかた値引き交渉などしたことない。全て言値で買ってきた。「いい人」と言われるのが最高の賛辞だった。
しかし、開業という一大事を迎えて、はじめて親父の生き様に触れたような気がする。
私は、今まで、この親父に守られてきただけだった…。この歳になって自分で何も出来ない…。情けない!!
自分自身の“ていたらく”に思わずウルッとなりかけたが、容赦なく尋問は続く。
「毎月の運転資金は幾らかかるんだ?」
「運転資金?」
「だから、毎月幾らの出費があるのかということだ!」
相変わらず気が短い。と言うか、あまりに息子が不甲斐ないので情けなくてイライラしてるのかも知れない。
「えーっと、借入の返済が30万で、家賃が50万で、あとは…水道・電気?かな?」
「………!!!!バカモン!!!」