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新規開業医の悲しい物語

第12話はじめての「借金」:前編

佐川氏より銀行を紹介された。

「はじめまして。△△銀行の山本と申します!この度はありがとうございます!」

自分としては「都市銀行」をイメージしていたが、△△銀行?あまり聞いた事のない「地方銀行」だった。
佐川氏と同年代であろうか、「支店長付」となっている。支店でも高い地位の人間なのか…。

「4,600万円のお申込みですね。どのような内容をお考えですか?」

内容と言われても…、と、戸惑うことを見越していたかのように佐川氏が口火を切った。

「返済は20年、元金は少しでも早く減らしたいので“元金均等”で、もちろん、社保・国保の指定口座にします」
「あと、据置は3ヶ月でお願いします。」

「………。」

ワケがわからない。どうも融資の決まり上、診療報酬が振込まれる口座を作らなければいけないらしい。それは別に構わないが、あのビルの近所に、この銀行の店舗はあっただろうか?何かと不便になりそうな気もするが、4,600万円も貸してくれるんだから、多少の無理は仕方ないかも知れない。

「利率が3.225%で、毎月の返済は元金が約20万円プラス当初約11万の利息で、合計30万~31万ですね」

この3.225%も高いのか低いのか分からない。親父が付き合ってる銀行にも聞いてみるべきか…。しかし、いまさらどの面下げてお願いすればいいものか…。世の中は低金利時代と言われているが、それは「預金」だけの話で、こういう貸付金利は関係ないのか?
しかし、20年もかけて返済するので、こればかりは慎重に選びたい。山本氏が少し席を外したタイミングを見計らって、思いきって切り出してみた。

「佐川さん、他の銀行の話も聞いてみたいのですが…。」

「先生、この私が選びに選んでご紹介しているので問題ありません。何か不安なことでもあるのですか?」

今までのやわらかい口調ではなく、少し厳しい口調で返された。

「このローンはお医者さんが開業するためだけの特別なローンです。これ以上、好条件の融資はありません!」

う~ん…、やはり口出しすると怒るようだ。確かに、親切心を疑われては誰でも気を悪くするし、当たり前か…。

今から思えば、お人よしにもほどがある。 この出来事を境に、ますます佐川氏に逆らえなくなっていく。

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